音と音楽の話 / Sound and Music

録音機材、楽器、音楽、オーディオなど諸々

AT-4050とアコースティック楽器

世界のあらゆるマイクを使った経験があるわけではないけど、それでもAudio TechnicaのAT-4050はアコースティック楽器を録音するための最良の選択肢の一つとしてオススメできる。

 

特に私のようなアマチュア音楽愛好家がお小遣いを貯めて買える価格帯のマイクとしては最高の性能と言える。

 

何が最高かと言うと、AT-4050は演奏しているモニター音と、録音された音の違いが少ない。

初めて使ったときには、これほどアコースティック楽器の生々しさが録音できるものかと驚いた。

 

特に少し中低域が豊かで密度が高く、安物のマイクでは表現できない生楽器の深い音が収録できる。高域は不自然なギラつきはなく、自然に伸びている。

 

これが1本7-8万円程度で買えてしまう。レコーディングスタジオで使われているような外国製の20-30万円のコンデンサーマイクと比較すれば抜群のコスパと言える。

 

もちろん、それでも高いと思う人がいるかもしれないけど、そう言う人に限って楽器には高いお金をかけていたりする。

 

例えば、アコギが大好きな人が楽器を買う時、20万円の楽器と26万円の楽器があって、26万円の方がどうにも気に入ってしまったら多分そっちを買う。

 

もちろん、ネックの太さとか指板の具合とか、弾きやすさに関する部分は譲れないけど、大抵の場合は「19XX年製」とか「なかなか手に入らないカラー」とか、音とは関係ない要素にお金をかけている。

 

そういう部分に掛けるお金があるならマイクに投資をした方が音源は確実に良くなる。

 

マイクはスタジオとかエンジニアに借りれば良いという考えもあるけど、常に信頼できるマイクを所有していると自分の演奏やアレンジのイメージを作りやすい。

 

下にリンクをつけた音源もマンドリンはオンマイク、バイオリンとピアノはオフマイクにして距離感を調整している。きちんと音を拾ってくれるマイクでなければ同じ事をしても良い結果にならない。

 

〜音源

最近Buena VIsta Social Clubを久しぶりに観て影響を受け、"ブエナビスタごっこ"をしてみた。

 

ピアノ、バイオリン、マンドリンは全てAT-4050で録音(ドラムは生録素材、ベースはソフト音源)。

 

youtu.be

 

RNP8380 マイクプリ

もうかれこれ10年以上前、良質なマイクプリが欲しくてFMR AudioのRNP8380を購入した。
 
個人で買うには決して安くない金額だけど、頑張れば手が届く範囲の値段。
 
その後、それほどハードに使っているわけではないけど、壊れもせず現役。
 
2020年現在もまだ販売されているようで、値段も落ちていない(8万円くらい)。
 
今使っているAudio I/O (RME BABYFACE  Pro)のマイクプリ音質は十分に良いので、特に意図がない場合はマイクと直接挿して録音しているけど、RMEは高音も低音も漏れなく録音してくれる反面少し音が硬く感じる事もある。
 
温かみのある音が欲しいときにはRNP8380の出番となる。
 
録音後の編集で高音を削ったり温かみを足したりする事もできるのかもしれないけど、スキルが無いこともあってどうしても不自然になる。
 
マイクプリだけで狙った雰囲気が出せるのはありがたい。
 
近年ではViolinを録音する時にAT-4050(コンデンサーマイク)とセットでRNP8380を使うのが定番となっている。弓と弦が擦れるときの嫌な高音成分は感じないのに上から下までバランスよく録れる。
 

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※bandcamp
 
 

4トラックMTR(TASCAM DR-44WL)

TASCAMのポータブルレコーダー"DR-44WL"には4トラックMTRモードの機能がある事を思い出し、少し遊んでみた。

 

トラック数に制限がないPCベースの録音が普及して既にかなりの年数が経過しているけど、それでもポータブル機を立てて簡単にその場の雰囲気を録音するのは楽しい。

 

でも2チャンネルだとちょっと物足りないので、ほんの少しだけオーバーダブできる4トラックは絶妙な規格。

 

本体での編集作業など到底やる気がしないので、必然的にほぼ一発録り。

 

簡易的なリバーブはついているけど、逆に安っぽくなるのでドライの方が良い。

(webにアップするためにPC上でノーマライズダイナミクス調整はかけているけど)

 

演奏を間違えたらトラックごと消して最初からやり直す事になるので、ちょっとした間違いは気にしない。

 

体裁を整えるより音楽的に良い感じにしようという気持ちの方が大事。

 

限られた4トラックをどう使うか考えるのも楽しい。

 

今回はThe Band の「Bessie Smith」   をカバー。ギター、ピアノ、歌1、歌2にしてみた。

 

*この曲はThe Bandが地下室でセッションした演奏をメンバーのガース・ハドソンが自身のテープレコーダーで記録した音源を基に制作されたアルバム「Basement Tapes」に収録。(アルバム名義はBob Dylan & The Bandだけどこの曲にDylanは参加していない)

 

 

soundcloud.com

 

Piano : YAMAHA Upright

Guitar : Gibson J45

Recorder : TASCAM DR-44WL (MTR Mode)

ポータブルレコーダー SONY IDC-SX2000

リチウムイオンバッテリーが搭載されたSONYの小型レコーダー「IDC-SX2000」が手元に来たので、ここ数年メインで使用しているTASCAM DR-44WL、そして普段メモとして最も使用頻度が高いと思われるiPhoneとも比較してみた。

 

SONYIDC-SX2000はとにかく軽くて薄い。もしこれが使える音質であれば、2ch録音で事足りる場面にTASCAMを持ち出す必要がなくなる。

 

今回は単純に1メートルほどの距離に3機種を並べてアコギを弾いてみた。

 

1. TASCAM DR-44WL

この機種は4ch録音が可能なハイスペックレコーダー。バンドのリハなどでマイクでのエアー録音に加えてベースのライン録音を足したり、ミキサーからボーカルとキーボードを別トラックでライン録音したり、非常にクリアな録音ができる。

個人的にちょっと気に入らないのはマイクがXY固定な事。ABで良いと思うシチュエーションも多いので可動式にして欲しかった。あと、ジョグダイヤルの反応があまり良く無いこと。操作性はあまり良いとは言えない。

とは言え、これに替わる製品は目下見当たらないので非常に重宝している。

 

今回録音して改めて感じる印象は低音がしっかり録音されているという事。

この手のレコーダーにありがちな中高音がキンキンした音にならずにナチュラルな音質が得られる事。

※以前アコースティックライブで使用したけど、アコギ、バイオリン、パーカッションの音質も非常に柔らかい。(https://soundcloud.com/suga-shin/mitsuyo-with-151205-live-digest

 

soundcloud.com

 

2. SONY IDC-SX2000

TASCAMに比べると低音が少ないので少し軽い(薄い)音質。ただし、2本のマイクの縦位置がTASCAMとは違って揃っているせいか、音の焦点(位相)はこっちの方が優れている。非常に自然なステレオ音像が得られた。また、低音が少ないのはアコギのブーミーな低音を拾わないのでちょっとしたメモをすぐに聞きやすい音質でメモするという目的には適していると思える。 

soundcloud.com

 

2. iPhone 6s

iPhoneのボイスメモは侮れない実力。レンジが狭いけどその分耳に痛い部分はないので聞きやすい。メモとしては味があって良いが、聴かせたい音にするのはやはり専用レコーダーを使った方が良さそう。

 

soundcloud.com

 

Guitar : K.Yairi GF-7

 

ATM350 ギターへの取り付け

数年前に、ライブで使うViolin用のマイクとして購入したaudio technica製のクリップマイクATM350。
 
何とかアコギやマンドリンにも応用して使えないかと考えていたけど、メーカーが出しているアタッチメントはドラム用やピアノ用のみ。ギター用は見当たらない。
 
DPAが出しているDPA4099というクリップマイクは楽器に取り付ける付属品が充実していて、アコギ用のアタッチメントも使い勝手が良さそう。でも、5万円ほどするマイクなので少々お高い。
 
これから買うのならまだ考える余地もあるけど、既に同じようなクリップタイプのコンデンサーマイクがあるのにアタッチメントのためだけに5万円は出せない。
 
あと、YouTubeでDPA4099のアコギ録音のデモを色々見たけど、音質が少し自分の狙いと違っている感じだった。音が締まっているけど、中低音が弱くて硬い印象。
 
なので、「ATM350をDPA4099の様にギターに取り付けたい」という事になった。
 
同じ様な事を考えている人がいないかネットで調べたけど、このマイクをアコギに付けている人は少ない。
 
1人はテープで直接ギターボディに取り付けていたので、ちょっと自分は真似できない感じ。ギターにテープの糊が付きそうだし、マイクのセッティングも限られる。
 
もう1人はaudio technicaの他のクリップマイクに付属するギター用アタッチメントを使っている人。このアタッチメントはサウンドホールに取り付けるタイプなので、マイクがサウンドホールを狙う事になる。
試してはいないけど、一般的にアコギの録音でサウンドホールを直接狙うと中低音が出過ぎるので自分好みではない。あとマイクとボディが平行になりマイクのセッティングも調節が出来ない。残念ながらこの案も自分の考えとは違う感じ。
 
何とかDPA4099のギターアタッチメントの様なものを自分で調達できないかと思って色々ネットでも検索したけど全然出てこない。
 
半ば諦めて近所のホームセンターに行ったところプラスチックパーツを使った小型軽量のクランプが置いてあり、幅も自分のギターにぴったり。値段は300円程度。
 
帰って早速取り付けると何とサイズ感バッチリ。
 
クランプのレバーなどはプラスチックなので軽くて良いけど、芯棒は金属製なのでクリップマイクを取り付けても安定している。
 
但し、マンドリンに取り付けたところ、ギターと違ってボディがフラットではないので不安定でうまく挟み込めない事が判明。強く締め付けると多少は安定するけど、ボディが割れそうで怖い。
 
なので、挟み込む部分のプラスチックパーツ(写真で赤い部分)を同じくホームセンターで買った滑り止めゴム(片面がシールになっていて家電の下に貼る様なもの)を貼ったら良い感じになった。
 

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※クランプの芯棒(金属)の先端にクリップマイクを取り付ける

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マンドリンに付けると少し大きいけど、演奏の邪魔にはならない

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※挟み込む部分がプラスチックだったのを滑り止めゴムに変更
 
 

[REC Demo]

Microphone : audio technica / ATM350
Guitar  : K.Yairi / GF7
 Flat Mandolin : Eastman / MD514
 
 
 

バイノーラルマイク CM-10EM / Binaural Microphone CM-10EM

Rolandの”CS-10EM”という比較的安価なバイノーラルマイクが実家に転がっていたのでもらう事にした。
 
バイノーラルマイクは小型のマイクを自分の両耳に取り付けて、耳で聴いたままの音の再現を狙って録音するマイクのこと。
 
昔から興味はあったけど、どちらかというと音楽ではなく屋外の自然音を収録する人たちが使っているイメージがあったので、あえて買おうとは思わなかった。
 
プラグインパワーが必要なのでiPhoneでは使えないようだけど、最近手元に帰ってきたSONY PCM-D50と組み合わせれば録音できそう。ちょうどPCM-D50の内蔵マイクの品質に満足していなかったので良い機会。
 
このモデルはイヤホンの外側がマイクになっている構造で、イヤホンでモニターを取りながら録音も出来るという代物。つまり1台でマイクとモニターの両方を兼ねている。
 
一見すると普通のイヤホンだけど、録音マイク用の線(赤端子)とモニター用の線(黒端子)の二本が出ていてそれぞれレコーダーの録音端子とイヤホンジャックに繋げる。今まで経験した事がない録音スタイル。
 
とりあえず実家のグランドピアノの前に座って録音してみたら、思った以上に良い音で録れた。さすがに高音と低音は録りきれていない感じはあるけど、それでもとてもこのサイズのマイクとは思えない質感。安いコンデンサーマイクにありがちな痛い高音とか膨らんだ低音が無く、バランス感が良い音。
 
「レコーディング的な良い音」というよりは、「自分が耳で聴いている音が素朴にそのまま録れた」という感じ。
 
ライブを録音すると臨場感が出そうな感じで、見た目も「マイク立てて録音してます」という感じにならないので積極的に使ってみたい。

 

 [REC Demo]

Microphone : Roland CS-10EM
Piano : Yamaha Grand Piano
Recorder : Sony PCM-D50